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次世代燃料として注目のLNGを軌道投入用ロケット「ZERO」の推進剤に選定

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インターステラテクノロジズ株式会社(本社:北海道広尾郡大樹町 代表取締役社長:稲川貴大、以下IST)は、次世代燃料として注目されるメタンを主成分としたLNGを、超小型人工衛星の軌道投入用ロケット「ZEROの推進剤として選定したことをお知らせします。

 

各国の宇宙事業でも注目の、次世代推進剤LNGを選定

これまでISTでは常温炭化水素系燃料であるエタノールなどを用いて、推進系の研究開発や観測ロケット「MOMO」の打上げ運用を行ってきましたが、次世代推進剤として各国で研究開発が進むメタンにも以前より着目してきました。メタンは、供給の安定性が高く、化石燃料の中では温室効果ガス(GHG)の排出が比較的少ないという特徴を持ちます。また、ロケット開発においてメタンは、液体酸素/液体水素推進系燃料と比較して密度が大きい為、タンクの小型化が可能で、断熱も液体水素に比べ容易です。液体水素より揮発しにくく軌道上での長期運用に利用可能 で、将来的には大型ブースターロケットへの発展可能性があります。燃料自体も安価で、取扱いの容易さからロケットシステム全体の低コスト化にも貢献します。一方、メタンを主成分とするLNGは、常温炭化水素系では最もよく使われているケロシン系燃料と比べると、エンジン性能を表す比推力を高くすることができ、海洋汚染の心配がないクリーンな燃料です。さらに、固体推進剤のような大気汚染がなく、軌道上でよく利用される燃料ヒドラジンと比較しても無毒で危険性が低いという特徴もあります。

ISTは本社工場、実験場、ロケット射場を北海道大樹町に有しておりますが、北海道では家畜の糞尿から取れるバイオガス(メタンを多く含む)の生産量が日本の1/3を占めています。こういった背景から、将来的にロケット燃料を地産地消していくことも検討しています。

これらの特徴から、有望なロケット用推進剤として各国の宇宙事業で大型小型ロケットを問わず研究開発が進んでいます。IST単独では乗り越えるハードルが多い次世代燃料ですが、「みんなのロケットパートナーズ」の参加法人である国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)、国立大学法人 室蘭工業大学(以下 室蘭工業大学)との共同研究・共同試験をはじめとする専門家のご助力を得て、今回の選定に至りました。

参考)

IST代表取締役社長 稲川貴大note:近未来のロケットは都市ガスで飛ぶ

URL:https://note.com/ina111/n/n2432acff2200

JAXA角田宇宙センターにおいてピントル型噴射器の燃焼特性を取得

ISTとJAXAは、新たな宇宙事業を共創する研究開発プログラムである「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(以下J-SPARC)」に基づき、ISTで開発を行っている超小型人工衛星の軌道投入用ロケット「ZERO」での使用を目的として、安定した性能を有し、かつ低コストのロケットエンジンの研究開発を2019年度から進めてまいりました。ISTからは宮城県のJAXA角田宇宙センターに社員を中長期で派遣し、JAXAが持つロケットエンジン開発の豊富な知見を共有いただき、研究開発を行ってまいりました。

2020年1月下旬から2月末にかけて、JAXA角田宇宙センターにて、ロケットエンジンに内蔵するピントル型噴射器の燃焼特性を取得することを目的として、推力3トン級のロケットエンジン燃焼試験を実施いたしました。ピントル型噴射器は部品点数が少ないなどの特徴を持ち、観測ロケット「MOMO」のメインエンジンにも採用しています。また、JAXA角田宇宙センターでは30年前からLNGを用いた燃焼試験を実施しており、本試験もその知見を活用して行われています。J-SPARCの枠組みを活用したピントル型噴射器の燃焼試験は2019年7月に引き続き2回目となりますが、ISTの設計による噴射器を燃焼試験に供するのは今回が初めてです。

本試験は、燃焼効率や燃焼安定性、壁面熱負荷特性といった燃焼特性を取得するものです。特に壁面熱負荷特性(燃焼室のどの位置にどれだけの熱負荷がかかるか)は再生冷却エンジンの研究開発において非常に重要な知見となります。この壁面熱負荷特性は、JAXA角田宇宙センターで保有する環状冷却流路を持った燃焼器を用いて取得を行いました。

参考)JAXA角田宇宙センターにおけるピントル型噴射器燃焼試験の動画(youtube)

LOX/メタン ピントル型噴射器燃焼試験(JAXA角田宇宙センターにて実施)

URL:https://youtu.be/q3uffM8keoI

 

室蘭工業大学との共同研究によりターボポンプインデューサの設計と性能確認試験を実施

ISTと国立大学法人室蘭工業大学(以下室蘭工業大学)は、2019年度から、軌道投入用ロケット「ZERO」の低コストターボポンプについての共同研究を行うとともに、これらを通じた研究者の人材交流などの人材育成に取り組んでまいりました。ISTからは室蘭工業大学航空宇宙機システム研究センターに社員を常駐し、室蘭工業大学が持つターボ機械やロケットシステムへの知見を共有いただき、ターボポンプシステムの研究開発を行ってまいりました。

2019年度上半期に、ロケットエンジン用ターボポンプの最重要コンポーネントの一つであるインデューサの設計を行いました。インデューサは、ターボポンプが推進剤をポンプ内に吸い込むための部品であり、ロケット全体の設計に大きく影響する非常に重要なコンポーネントです。対象としたターボポンプは、「ZERO」への適用を目的とした、推力6トン級、LNG / 液体酸素(LOX) エンジン用のものです。

さらに、2019年9月から10月にかけては、大阪大学が所有するキャビテーションタンネルを用いて、インデューサが設計通りに機能するかどうかの性能確認試験を実施しました。性能確認試験ではほぼ想定通りの性能を示す良好な結果が得られ、室蘭工業大学との共同研究による設計プロセスが正しいことを実証しました。この成果の一部は、2019年9月のターボ機械協会定期講演会(岡山)にて発表済でありますが、より詳細な設計・試験データについては今後学会誌等に投稿を予定しております。また、本設計を用いたインデューサの製造性については、実スケール供試体にて確認しています。

現在は、JAXA角田宇宙センターのご助言もいただきながら、「ZERO」用LNG / LOXターボポンプの基本設計を進めており、2021年のターボポンプ/燃焼器統合試験を目指して研究開発を進めています。

 

▼プレスリリース詳細

200305_zero_methane_release_revE(release)

▼Press Release (English ver)

2003_zero_methane_release_EN

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