2022/04/28

【プレスリリース】超小型人工衛星用ロケットZERO、室蘭工業大学・荏原製作所との実機モデルでのエンジン試験が本格始動しました

インターステラテクノロジズ株式会社(本社:北海道広尾郡⼤樹町、代表取締役社⻑:稲川貴⼤、以下インターステラテクノロジズ)と国立大学法人室蘭工業大学(北海道室蘭市 学⻑:空閑良壽、以下室蘭工業大学)、株式会社荏原製作所(本社:東京都大田区 取締役・代表執行役社長:浅見正男、以下荏原)は、共同で研究開発を進めている、超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」(以下ZERO)のエンジン用ターボポンプについて、ポンプ(*1)部分の性能を確かめるための要素試験となる「水流し試験」(以下本試験)を行い、ポンプの効率や昇圧性能など必要なデータを取得しましたので、お知らせいたします。今後、本試験の結果を踏まえた数回の水流し試験を経て、ターボポンプ全体の機能・性能を確かめる「ターボポンプ冷走試験」、燃焼器などをすべて含めた2023年度の「エンジン統合試験」へと開発を進めてまいります。

*1 ポンプとはインデューサとインペラ(遠心羽根車)で構成され,流体の圧力を高める機能を有する流体機械

試験名称 :ポンプ単体水流し試験
試験目的 :ポンプ性能が設計で予測される理論的性能を満たしているかを確認すること
期  間 :2022年4月25日~28日
場  所 :インターステラテクノロジズ本社
試験内容 :設計時の予測通りに、ポンプが回転軸の動力を流体(水)の圧力に変換できたかについて、広範囲な流量におけるデータを取得した
試験映像 :https://drive.google.com/file/d/1rfAQpAFWE77TLWx45MZr8ztgX-HGbFd6/view
※試験対象時間は0分30秒~3分5秒あたりとなります

ロケットの”心臓”ターボポンプ、設計・製造・試験を3機関で初実施

推進剤(燃料・酸化剤)タンクから燃焼器に燃料と酸化剤を送るための”心臓部”に当たるターボポンプは、インターステラテクノロジズがこれまで打ち上げてきた観測ロケット「MOMO」(以下MOMO)にはない部品で、ロケットエンジンの中でも最も開発が難しい要素の一つと言われています。
ターボポンプはタービン部分とポンプ部分(インデューサとインペラで構成)、それらをつなぐ軸と機構部品で成り立っています。ZEROで使用するターボポンプは長さ約35cm、直径約30cm。1分間に数万回と高速で回転するタービンの力でポンプを駆動させ、推進剤を高圧で燃焼器に送り込むことで高い推進力を生む役割を持っています。
ターボポンプの設計は、室蘭工業大学に設置された「宇宙プロジェクト共創ラボラトリ」にて、インターステラテクノロジズと室蘭工業大学、荏原の共同で進めてきました。本試験の前には、室蘭工業大学が主導してインデューサ単体での水流し試験も行っており、今回はそのインデューサとインペラ(遠心羽根車)を統合し、より実機のターボポンプに近い形での試験となりました。
本試験の目的は、実機と同一設計で製作されたモデル(ポンプ部)の性能を確認することです。試験ではタービンの代わりに、電動モーターによって回転軸を駆動させました。モーターからポンプへの動力伝達部は、ポンプの開発や運用で数々の実績がある荏原が設計・製造ともに担当しています。当日は3機関のメンバーが集結し、それぞれが役割を分担しながら実施する初めての本格的な試験となりました。

室蘭工業大学を拠点に昨年9月から共同開発

室蘭工業大学は日本の基幹ロケット用エンジンの開発に関する豊富な経験と実績を有しており、インターステラテクノロジズは2019年度から、室蘭工業大学と共同で低コストターボポンプの研究に取り組んできました。
荏原は2021年8月、社長直轄のコーポレートプロジェクトとして「CP水素関連事業プロジェクト」を発足し、主力テーマの一つとして航空宇宙技術分野を掲げました。3者は2021年9月より、室蘭工業大学航空宇宙機システム研究センターに開設した「宇宙プロジェクト共創ラボラトリ」を拠点にターボポンプの共同開発に取り組んでいます。

(参考)室蘭工業大学、荏原との3機関による共同開発開始プレスリリース https://drive.google.com/file/d/1HExZcWkMwB1tOxbjwDE0L5AUwY-jYOS-/view

宇宙は次の成長産業、人工衛星で世界が変わる

近年、世界ではSpaceXをはじめとした宇宙ベンチャーが活躍し、宇宙ビジネスが盛り上がりを見せています。2040年には世界の宇宙産業は100兆円超の巨大市場に成長するとされています。宇宙からの人工衛星データは既にGoogleマップやGPS機能など日常生活に欠かせないものとなっていますが、今後は衛星を使ったインターネット通信、人出不足の解消や食料の安定供給といった社会課題への衛星データの活用など、宇宙利用がさらに進むことが期待されています。

人工衛星を運ぶロケットが足りない

一方、増え続ける人工衛星の需要に対し、衛星を運ぶロケットの数が足りていません。世界では2021年にロケットが140回程度打ち上げられていますが、日本の打上げ回数は3回で、日本の人工衛星も海外での打上げを余儀なくされています。ZEROは、衛星をより安く、より高頻度に打ち上げることのできる世界の実現を目指しています。

低価格で便利な、選ばれるロケットZERO

ZEROはインターステラテクノロジズがMOMOに続くロケットとして開発を本格化させている、超小型人工衛星を宇宙空間(地球周回軌道上)に運ぶための小型ロケット(長さ25m、直径1.7m、総重量33t)です。
衛星の小型化が進む中、大型衛星との相乗りとなる中~大型ロケットよりも、衛星が目的とする軌道に直接運べたり、打上げ時期やミッションへの自由度が高い点が特徴です。例えるなら、大阪へ運びたい小さな荷物を東京行きの大型トラックに相乗りさせるか、小型チャーター便で大阪まで直接運ぶかといった”選択肢”を、宇宙輸送でも実現することを目指しています。
ZEROは、国内既存の人工衛星打上げロケットの価格が40~200億円であるのに対し、1機あたり6億円以下という圧倒的な低価格化を目指しています。一般的には複雑で高額となるエンジンシステムを独自設計するなどコア技術を自社で開発しているほか、設計から製造、試験・評価、打上げ運用までを自社で一気通貫させた国内唯一の開発体制、アビオニクス(電子装置)への民生品活用などにより、低価格で国際競争力のあるロケットを開発しています。
また、東と南が海に開かれた世界有数の好立地、かつ本社から7.5kmの近距離に射場を有することも、世界的に見て大きなアドバンテージです。海外の民間ロケットで多く使われている液体燃料を採用しており、固体燃料ロケットと比較して振動が少なく人工衛星への負荷が少ないことも特徴です。

《各社・大学コメント》

インターステラテクノロジズ株式会社 研究開発企画統括 金井 竜一朗

「ZERO」の心臓部であるターボポンプの開発は新たな協力体制のもと、大きく加速してきました。今回のポンプ要素試験は、その最初の大きなハードルでした。今回の試験装置は3機関それぞれの技術者が経験・アイディア・実行力を出し合って化学反応が起きたからできたものです。
これからターボポンプ全体での動作試験、そしてエンジン試験と、超えるべきハードルはありますが、「誰もが宇宙に手が届く未来をつくる」というビジョン実現に向け、一層開発を加速していきます。

国立大学法人室蘭工業大学 航空宇宙機システム研究センター長・教授 内海 政春

高速回転機械がいよいよ回り始めた、というわくわく感・ドキドキ感があります。
ターボポンプは心臓によくたとえられますが、ZEROの心臓と開発担当者の心臓の両方がすごい勢いで動き始めています。インターステラテクノロジズや荏原製作所のエンジニアのひたむきな姿に敬意を表するとともに、この開発に携わっている当研究室の学生も刺激をもらっており、日々の成長を感じています。
これからも乗り越えるべき山が連続してやってきますが、目標とする頂はより大きく、はっきりと見えてきていますので、引き続き3機関の総力を結集して進めていきます。

株式会社荏原製作所 コーポレートプロジェクト 水素関連事業プロジェクト 技術開発ユニット 航空宇宙技術グループ(リーダー 藤枝英樹)

2021年9月より「ZERO」のターボポンプ開発に参画してまいりましたが、このたびポンプ要素試験という一つの重要な段階を迎えることができ、大変うれしく思っております。
共同開発を通じて、インターステラテクノロジズおよび室蘭工業大学からは様々な刺激やご助力をいただき、感謝申し上げます。
今回の試験はまだ通過点の一つにすぎませんが、引き続き当社の強みである回転機械技術を活かしながら「ZERO」の開発、そして宇宙産業の発展へ貢献してまいりたいと考えております。

▼プレスリリース https://drive.google.com/file/d/1F0nYKalKPkzJEm2Rv6kzfEtt_3n1n3Xg/view?usp=sharing