NEWS

人工衛星事業が、情報処理学会山下記念研究賞とNASA国際会議表彰を受賞しました

CATEGORY

TAG

ロケット事業と通信衛星事業を通じ、社会で使われる宇宙のインフラを提供することを目指すインターステラテクノロジズ株式会社(本社:北海道広尾郡大樹町、代表取締役 CEO:稲川貴大、以下インターステラテクノロジズ)と、共同研究機関である国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学は、情報処理学会「山下記念研究賞」(2件)と国際会議NASA Formal Methods SymposiumにおけるHonorable Mentionを受賞しましたので、お知らせいたします。受賞対象となった研究は、いずれもスマートフォンや自動車などと直接つながる次世代の高速衛星通信の実現に不可欠な要素技術であり、本衛星の革新性・重要性と各成果の有用性が広く認められたものです。

インターステラテクノロジズは、超小型サイズの人工衛星群が互いの位置や姿勢を制御しながら宇宙空間で高精度に協調して飛行するフォーメーションフライト(編隊飛行)技術を通じた、地上端末との直接接続が可能な高速大容量のブロードバンド衛星通信の実現を目指し、2024年から総務省委託研究「電波資源拡大の研究開発(JPJ000254)」を受託し、国内大学と共同で基礎研究を進めています。

(成果概要1) フォーメーションフライトでは、多数の衛星を整列・協調させて一つの巨大アンテナのように機能させるため、個々の衛星の動作を制御する衛星間無線交信が欠かせません。しかし1万~10万機規模の衛星が同時に通信すると、手順(プロトコル)が不適切な場合、信号が衝突(干渉)したり大きな遅延が生じたりして正常な通信が損なわれます。本研究では、衛星をグループ化したり、電波を時間ごとに区切って共有するTDMA方式を最適化したりすることで、大規模衛星群でも安定した高速制御通信を可能にする方法を検討しました。これはフォーメーションフライトを正常に機能させるための重要な基盤技術です。

(成果概要2)成果1にもあるとおり、フォーメーションフライトでは多くの衛星が制御通信を行いますが、受信した情報が正当な衛星から送られたもので、内容に誤りもないことを確認しなければ、外部からの乗っ取りや誤動作につながります。その確認には特殊な計算回路を使いますが、設計に不備があれば安全な通信はできません。本来この回路を完全に検査するには2の256乗通りの入力を調べる必要があり、1秒に1億回試しても約37那由他(なゆた)年かかるため、実質的に不可能でした。そこで本研究では形式論理学の手法を応用し、この完全検査をわずか17時間で実現しました。これは安全に運用できるフォーメーションフライトを製作するうえで欠かせない設計技術です。

受賞対象となった論文題目

1. 情報処理学会 2025年度山下記念研究賞 https://www.ipsj.or.jp/award/yamashita2025.html
佐々木 航, 安本 慶一, 松井 智一, 諏訪 博彦, “小型低軌道衛星群を一つのアンテナとして動作させるための衛星間リアルタイム情報伝達機構,” 情報処理学会研究報告 マルチメディア通信と分散処理(DPS),Vol. 2025-DPS-202, No.12, pp.1-8, 2025-03.

森岡 澄夫, 尾花 賢, 吉田 真紀, “民間ロケット制御用セキュア通信向け合成体乗算回路の形式検証,” 情報処理学会 DAシンポジウム2024論文集, pp.14-21, 2024-08. (※フォーメーションフライトとロケットの両方に利用可能)

2. 国際会議NASA Formal Methods Symposium (NFM-2025) Honorable Mention https://shemesh.larc.nasa.gov/nfm2025/

Morioka,S., Obana,S., Yoshida,M., “Formal Verification of Composite Field Multipliers for Information-Theoretically Secure Radio Communication in Spacecraft Control,” NASA Formal Methods (NFM 2025), Lecture Notes in Computer Science, Vol.15682, pp.236-253. Springer, 2025. https://doi.org/10.1007/978-3-031-93706-4_14

LATEST UPDATES